INTERVIEW

「トモダチコレクティブ」特別対談 <ユナイト×少女-ロリヰタ-23区>
対談メンバー:椎名未緒、リョヲ丞



■自分のバンド人生で初めて「抜かれた」と感じたバンドのリーダーなんですよ、未緒くんは。(リョヲ丞)

――「トモダチコレクティブ」、最後の出演者として少女-ロリヰタ-23区が発表されました。

椎名未緒(以下・未緒):無理を言って出ていただきました。

リョヲ丞:いやいや!

未緒:俺、最初は声をかけても出てもらえないと思ってたんですよ。復活直後のタイミングだし、スケジュール的に厳しいだろうなって。でもせっかく「トモダチ」って名前がついてるから、出て欲しかったし、声かけたの。

リョヲ丞:バンド的にも「今の自分達を見てもらおう、攻めの姿勢でやろう」という方針で固まっていたときに、このイベントの話が来て、「満場一致でやりましょう」と。今回が復活後初のイベント出演なんです。

――おふたりはもともと付き合いは長いんですか?

未緒:いや、ここ数年で突然仲良くなったんです。

――世代で、近しいフィールドで活躍されていたイメージがあるので。

未緒:それは確かにそうなんですけど。付き合い自体は最初にやっていたバンドで、お互いちょっと交流があったくらいで、その後は10年くらいずっと接触してなかったんです。

リョヲ丞:なかったですねえ。最初にバンドを始めた時期の、同じ界隈の同期ではあるんですけど、俺は遠慮してたというか。「あ、未緒さんどうも。」みたいなところがあって(笑)。
それで、未緒くんがデルフィニウムの解散のあと、キャンゼルを組んだときは少女-ロリヰタ-23区の方が先に売れていたというか、活動するサイズ感が違っていたので共演もあまりなかったし。

――対バンが被らなくなったと。

未緒:単純にそれもありますね。

リョヲ丞:とはいえ、「どうも俺と似てるな?」と気になってはいました。やってる音楽やスタイルの系統も似ていて、どちらもメインコンポーザーだし。

――そう、立ち位置が似てると思うんです。お互いに意識はされていたのでしょうか。

リョヲ丞:すごくしてました。そこのシーンの中に椅子というか枠みたいな位置ってあるじゃないですか。アーティスティックなリーダー枠?

未緒:なんでもやるマルチクリエーター枠?

リョヲ丞:先にその椅子に座られてたまるか、みたいな気持ちは当時ありました(笑)。

――横目でチラ見みたいな。

未緒:俺はもうガン見してましたよ(笑)。ずっと観てたし曲も聴いてた。「(少女-ロリヰタ-23区は)どこまでいくのかな」みたいな。

リョヲ丞:「ポジションが似てる人だよな」という認識だったんですけど、少女-ロリヰタ-23区のボーカリストが変わったタイミングで、ユナイトと共演したことがあったんです。それが最初の共演かな。その時は俄然ユナイトは勢いがあって、自分としては駆け出しのときの先輩を一旦追い抜いたつもりでいたんですけど、それがユナイトでひっくりかえされた気持ちもあったんですよ。負けた!みたいな。

未緒:(笑)。

リョヲ丞:自分のバンド人生で初めて「抜かれた」と感じたバンドのリーダーなんですよ、未緒くんは。


■なんか行き着く先がヴィジュアル系だったんですよね。(未緒)

――そこでお互い仲良くなったきっかけは何だったのでしょうか。

未緒:俺の方が突然興味を持ったというか。少女-ロリヰタ-23区が活休したあとWING WORKSを始めたじゃないですか。存在は知ってたけど「一人で頑張ってんだ、すごいなあ」くらいの認識だったんです。それがたまたまWING WORKSとイベントで一緒になることがあって、なんとなくリハーサルから観てたんです。そしたら想像していたものと全然違っていて、刀を振ってSEの音に当てる練習してたんですよ。

リョヲ丞:あの頃は「不死鳥-FENNIX-(フェニックス)」という曲で、ステージに殺陣を取り入れてましたね。

未緒:それを観て興味が湧いたんです。イベント・ツアーだったので、その後のライヴもずっと観てたんです。

リョヲ丞:当時WING WORKSは決して胸を晴れる規模でやってるわけではなかったので、自分から「ユナイトさ〜ん」みたいには行けなかった。卑屈になっていたというか「俺みたいなのが行っても……」みたいな精神の守り方をしていた時期だったんです。だから話しかけにくかったと思うんですよ。でも未緒くんが楽屋で声をかけてくれて……。最初は「なんだろう、馬鹿にしてるのかな?」って(苦笑)。それくらい意外だったんです。そのイベント・ツアーが終わった後にすぐ一緒にご飯に行って、真面目な話もしたり。そうやって話していくうちに、「ひょっとして僕たち、やろうとしてることが似てるのでは?」と感じたんです。

――意気投合したと。

リョヲ丞:根っこにあるものは似てるじゃん。と。

――同世代ですか?

未緒:聴いてきたものや観てきたものが似てるのかな。

リョヲ丞:同じ渦で生きていた。

未緒:似てる部分もあるし明確に違う部分もある。

リョヲ丞:ライフスタイルが似てるというか。

未緒:基本的に俺は泥をすすって生きてきたし、「勝ち戦」の人生ではなかったので、それが俺の中でコンプレックスだったんです。そこでマイナスをプラスにするのが、俺のバイタリティの根本だったりするんですけど。そういう青春時代をリョヲ丞くんも送ってきたと。

リョヲ丞:完全なるキモヲタだったんで(笑)。

未緒:「だからこそ今勝ちたい」っていうスタンスが似てるなと。

リョヲ丞:何に負けてたかはそれぞれですけど。

――思春期のコンプレックスみたいなものですか?

リョヲ丞:完全にそれですよ。ここではない、どこかへ行きたいし、何者かになりたいし、みたいな。その手段がヴィジュアル系ロックだったと。

未緒:なんか行き着く先がヴィジュアル系だったんですよね。世代です。ヴィジュアル系の全盛期、栄華を見ていた世代なんですよ。


■多分未だに「ヴィジュアル系の栄光」にあてられてるんだよ(笑)。(未緒)

――おそらく思春期に「ブームとしてのヴィジュアル系」を見ていたのって、おふたりの世代が最後ですよね。ゴールデンタイムの音楽番組にたくさんのヴィジュアル系バンドが出ていた時期を中学生くらいで体験している最後の世代。

リョヲ丞:そうですね、俺らの次の世代くらいで「ヴィジュアル系ダサくね?」ってなってDragon Ashとか聴き出すみたいな。

未緒:この世代のヴィジュアル系バンドマンが未だにバンドを辞められないのって、それが大きいと思うんです。

リョヲ丞:うんうん。

未緒:ウチラより若い世代ってどんどん辞めていくじゃん。なんだかんだで中堅層でがんばってるのが俺らの同世代じゃない。多分未だに「ヴィジュアル系の栄光」にあてられてるんだよ(笑)。

――ユナイトは「終わらないバンド」を掲げていますよね。

未緒:終わりたくないの象徴なんです。バンドというか音楽自体が下火だし、終わるかもという危惧もあります。

――今の時代、娯楽も多いですし、いい音楽を作って~だけでは成立しない、時代に追いついていけてない。

リョヲ丞:システムが追いついてないみたいな。

未緒:普段おれらふたりでそういう話ばっかりしてるよね。

リョヲ丞:たしかに(笑)。なんというか、僕たちも中堅になって、昔よりは賢い、知識があるわけで。昔は音楽を続けたかったら、たとえばレコード会社に認められないとCD出せませんみたいな部分も大きかったじゃないですか。でも、今は自分たちでCD作れるしブッキングもできるし。そういうこともアーティストの側で考えて、良いものを作って演奏して楽しんでもらって、極論僕らとお客さんで完結することもできるじゃないですか。もちろん見てきた「栄華の時代」とは違った努力が必要になってくるんですけど、そこに俺たちの世代の活路はあるんじゃないかな?って話はよくしてますね。

――「人気ドラマのタイアップ曲になれば売れる」というわけでもないですし。見て育ってきたものと違うことをしないといけない時代ですよね。

未緒:「長く音楽を続けたい」それがうちのバンドのポリシーなんです。そういう境地に至ったことを、ふたりで話してるうちに、俺は手段として売れるべきだとは思ってるけど、方法論として、売れるために続けるんじゃなくて、長く続けていくためには、売れないといけないと考えているんです。そこを俺は「高さと距離」って捉えている。リョヲ丞くんも昔よく公言してたけど「上に行きたい」っていう概念ってあるじゃないですか。

リョヲ丞:言ってたね~。

未緒:我々が最近よく言うのは「上に行きたい」ではなく「遠くに行きたい」なんです。瞬間の美学でなく、音楽を長くやる、続けていく美学。だからこそ、既存の、「栄華の時代」にできた慣習に縛られ続けるのは寿命を縮めてしまうと思っています。そこは改革していかないとって話をふたりでもよくしています。


■そもそもライヴ1回1回が奇跡みたいなものなんですけどね。(未緒)

――そして満を持して少女-ロリヰタ-23区は「トモダチコレクティブ」のツアーファイナルに出演されるわけですが。

未緒:共演は6年ぶりかな?

リョヲ丞:2011年に共演してますね。でもそのときは体制が違うから。

未緒:ボーカルが颯くんのときはまだユナイトが存在してないもんね。

――ユナイトと少女-ロリヰタ-23区、両方好きという方もきっと多いと思うんです。ファンの方も楽しみなのでは。

リョヲ丞:はい。それはもう当時ウチからユナイトに動員ガッツリ流れましたからね(笑)。

未緒:逆に、今のユナイトのファンの方はWING WORKSは俺が好きだって公言してるから知ってるけど、少女-ロリヰタ-23区のときの「ヲ様」なリョヲ丞くんを知らない人もいるかもしれない。だからWING WORKSを始めたときに、リョヲ丞くんのことを知ってる人たちが、ギャップに衝撃を受けたように、今度は逆の現象が起きるのかな(笑)。ボーカリスト・RYO:SUKEではなくてベーシスト・リョヲ丞が出て来るじゃないですか、それがどう見えるのが楽しみかな。

リョヲ丞:確かに。

――最後に意気込みをお願いします。

リョヲ丞:本当に不思議なものだなって。長く続けてると、こういう素敵なことがあるじゃんってことが、お客さんに伝わればいいな。
バンド名前だけは知ってるけど、「復活した再結成バンドでしょ?」みたいなイメージで見る人もいるかもしれない。でも僕たちがまた集まれたのは奇跡みたいなものなので、気持ち新たに全力で取り組んで行こうと思っています。それが観た人に伝わるといいな。来てほしい……、いや「来なさい」。

――命令形!

未緒:単純に俺がリョヲ丞くんという人に対して持っている想いは「仲いいよね〜」くらいのレベルじゃないんですよ。3年くらい前に人生で色々あって精神崩壊した時期があって、それから変わろうと思ったときに、最初にできた「トモダチ」なんです。そんなトモダチ第一パーソンなんですよ。カメレオとの対談の時も言ってたけど、昔は心を閉じていたというか、そんな10年間そっぽ向いてた人間がこんなに素敵だったってことに気づかせてくれたのがリョヲ丞くんなんです。WING WORKSとしては何回も共演してるし、もちろんそれも嬉しいことなんですけど、少女-ロリヰタ-23区というバンドが完全に復活するからこそ、単発ワンマンではなくイベントにも出てくれるわけで。奇跡というか、まあそもそもライヴ1回1回が奇跡みたいなものなんですけどね。でも観てる人には重荷になっちゃうし、毎回奇跡だと思って観てくれとは言わないけど、せめてこのインタビューを読んで把握した上で、トモコレファイナルには参加してほしいということを伝えて、今日はお開きにしたいと思います。

リョヲ丞:まとまった! すばらしい(笑)。